15. 錯覚とメタ認知 錯覚とよいつきあいを築くために
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15-1.錯覚の積極的な意味
錯覚:対象の物理的性質とは異なるものが知覚される現象。 広く捉えれば、認知過程で生じる無意識の情報バイアスによって、合理的で規範的な認知との間にズレが生じることも錯覚の一つ
限られた能力を活かして環境に適応していこうとする認知の高度な働きが錯覚として現れている
私たちは生存のためにより的確に素早く世界を認識する必要がある
しかし、人の感覚器の能力は貧弱なものであり、また注意資源も限定されたものである
そのため、環境から取り入れられるボトムアップ的情報は断片的で多義的な性質を持つもの
これを補い安定した世界を素早く把握するために、様々な周辺の手がかりや元々持っている知識・スキーマといった利用可能な要素が動員される。
危険を素早く検知して安全を確保する行動を起こすこと、人の認知システムもその観点から自動的に働くように調整されている
「顔」の認識:知覚対象としての顔は生存にとって特別に重要な意味を持つ
シミュラクラ現象:逆三角形に配置された情報を見るとそれを素早く顔だと認識する働き できるだけ処理資源を節約して最小の労力で認知を働かせようという性質 認知的保守性の原理:人間の認知は極めて保守的な性格を持つ。予想通りで一貫したものであれば処理資源は最小限で済む。世界を予想に沿って捉えようとする。 人はランダム性を嫌い、身の回りのランダムな出来事の中から規則性や秩序性を発見しようとする傾向
人は単なる情報処理機械ではなく、自己概念と感情を持って日々を能動的に生きていること
「自分だまし」は人にとって自然な働きであり、ストレスを緩和し、除去するコーピングに有効に利用できる 「人間は判断力の欠如によって結婚し、忍耐力の欠如によって離婚し、記憶力の欠如によって再婚する」サラクルー 予言の自己成就:必ずしも正しくはないことでも、人の行動が介在することでそれが現実になってしまう現象 15-2. メタ認知とクリティカル・シンキング
自分の推論過程に対するモニタリングとコントロールを応用した実践的な思考
論理的、合理的で、規準に従う思考
よりよい思考を行うために目標や文脈に応じて実行される目標思考的思考
場合によってはクリティカルに考えないという選択、そして錯覚を許容する思考もクリティカルシンキングから導かれる合理的な判断になる
結論と行動決定に至る過程をモニターしコントロールする
熱い心と冷静な頭を自分の中に共存させよう
心を強力なエンジン(錯覚)で駆動し、それに冷静なドライバー(メタ認知)が状況をよく見てブレーキをかける
可謬主義:歪んだ見方が入り込み、知識は間違うことがあって自然なのだという考え方 バイアスの盲点:様々な認知バイアスは他人では生じるが自分ではあまり生じないと考える ナイーブ・リアリズム:自分が世界をありのままに客観的に正しく認識しているという自己中心的で素朴な知覚傾向 バイアスの盲点は思考能力や態度を改善してもなかなか低減されないとも指摘されている。
しかし、錯覚を体験することでこうした自己中心性が改善される可能性を示したのが神原・遠藤らの研究